大阪地方裁判所 昭和32年(ワ)3275号 判決 1958年11月19日
事実
原告は、現に、被告の振出した左記約束手形(本件手形)の所持人である。金額二五〇、〇〇〇円、支払期日、昭和三一年一二月一〇日、支払地、堺市、支払場所、株式会社大和銀行堺支店、振出地、大阪府南河内郡登美丘町、振出日、昭和三一年一〇月一三日、振出人、被告、受取人、第一裏書(白地式)裏書人、国藤建設工業株式会社(訴外会社)。
被告主張の抗弁。訴外会社が本件手形の支払資金を被告に手形の支払期日までに支払わないときは、被告は本件手形を支払わない特約の下に、被告は、訴外会に対する融通手形として本件手形を訴外会社宛に振出したものである。
原告は、右事実を知りながら、本手形を取得したものである。
理由
原告が被告主張の特約の事実を知つて本件手形を取得したとしても、それだけでは、原告は手形法第一七条但書にいわゆる債務者を害することを知つて手形を取得したものに該当しないものと解すべきである。けだし、手形流通保護の要求から、手形法第一七条但書にいわゆる債務者を害することを知つて取得したというためには、満期に手形債務者が抗弁を主張することは確実であるという認識を手形取得者が有していた場合であることが必要であると解するのが相当であるところ、上記特約を認識した場合、手形取得者は、満期における手形債務者による抗弁主張の可能性について認識したものであるといえるけれども、満期に手形債務者が抗弁を主張することは確実であるということを認識したものであるといえないからである。